会長あいさつ
化学と化学技術を支える横糸としての日本化学連合の役割 (2024・2025年度会長就任に際して) 会長 関 隆広
2023年度総会後の理事会にて、2024・2025年度会長に選任されました。精一杯務める所存ですので、皆様のご支援を何卒よろしくお願い申し上げます。
各学協会の活動が縦糸であるとすると、日本化学連合は、横糸として有機的に化学と化学技術を支える役割を担っています。当連合は、日本の化学および化学技術関連学術団体の連合体として、化学と化学技術の振興を通して社会に貢献することを目的として、2007年に日本の唯一の化学系学協会として発足し、2010年からは一般社団法人として活動を続けています。現在の会員は13学協会であり、所属する個人会員はのべ6万8千人を超えています。化学に関わるほとんどの領域の研究者・技術者が関わっていることになります。欧米諸国では化学系学会が一本化されているところが多いのに対し、我が国の化学系学協会は多くの学協会が個別に活動を進めているために、当連合の横糸として学協会の連携強化を進める意義は大きいと言えます。
国内外には、社会的な状況の変化や新たな課題が取り巻いています。特に環境・材料のリサイクル・エネルギー問題(GX)や持続的社会、健康・福祉の増進と感染症に強い社会の創出、DXの発展、気候変動に伴う災害に対応しうる保安・保全に関連したシステム構築等が共通かつ喫緊の課題となっています。これらの解決に向けて、化学分野や化学材料・技術の研究・教育の果たす役割と期待はますます大きくなっています。こうした課題の解決には単独の科学技術要素では解決に結びつくことができず、個々の専門分野を超えたグローバルな視点に基づく産学官の協働的な対応が重要です。
一方で、社会や行政は課題解決型の活動に目をとらわれがちですが、科学発展の本質である研究現場での個々の研究者の純粋な興味と情熱に基づいて進められる基礎研究が重要であることは言うまでもありません。これまでの革新的な発見や技術発展が、研究上の予期せぬ実験結果との出会いや研究者・技術者の鋭い感性や努力によって進められてきた事実に鑑みますと、次代へ繋ぐために教育や基礎研究を安心して進められる基盤環境づくりも極めて重要です。連合では個々の学協会では対応が難しいこうした課題を継続して取り組んでいきます。
日本化学連合は、毎年複数回の専門分野間や「アカデミア-企業-行政」を横断する独自のシンポジウムを積極的に企画・開催し、好評を得てきました。2011年に設立された化学コミュニケーション賞では、優れた化学の啓発活動への顕彰活動を続けております。その対象は、地域の草の根の活動、学生、専門家、アカデミア、企業、公的機関などからと広いもので、化学の面白さと意義を広く社会に知っていただけるよう、化学工業日報社と化学情報協会と共催して多くの団体のご支援のもとに進めております。
学協会の実務支援の面からも、日本化学連合は積極的な活動を行っています。当連合のホームページには会員学協会の行事やイベント情報が常にアップデートされ、他の学協会の行事も互いに把握できる場を提供しています。ぜひ積極的に活用していただきたいと思います。
学協会の実務面の支援と連携も強力に支援しています。最近では学協会の法人活動がより進めやすいように内閣府への働きかけも行いました。2018年には化学系学協会連絡会が立ち上がり、現在22の学協会が参画しております。記憶に新しいところでは、2000年から3年ほど、コロナ禍の活動が大きく制約され、学会活動に強い制約がかかった中、当連合ではこの連絡会を通じてノウハウを共有し、学術活動が停滞しない努力を進めてまいりました。また、情報・データ、生成AIなど、ここ数年での新たなインフラの発達は目覚ましく、今後も学協会業務の支援に向けたアイデア創出や工夫も続けていきます。
日本化学連合は各学協会と連携し、学術と産業を強化すると共に、競争力の源泉である研究教育環境の一層の改善による研究力・教育力の向上と時宜を得た人材育成により国際競争力強化を図り、あわせて化学と化学技術の振興を通して社会に貢献する活動、および政策提言・情報発信を行ってまいります。日本化学連合へのご理解と一層のご支援とご協力をお願い申し上げます。
東海国立大学機構名古屋大学
未来社会創造機構・特任教授
名古屋大学・名誉教授